バイルとの戦いが終わり、ネオ・アルカディアの跡地から次々と人間やレプリロイドがエリア・ゼロに移住をした。 シエルもまた、アルエットやセルヴォたちと共に、エリア・ゼロで暮らすようになった。
平和が訪れてから二年。 エリア・ゼロでは桜が満開の季節を迎えていた。
そんなある日、シエルはエリア・ゼロに咲き誇る桜を見つめながら佇んでいた。 綺麗な金色の髪が風になびいている。 整った顔立ちとあいまって、まるで春の妖精を思わせるような可憐な姿。 だが、その瞳は悲しげだった。
ゼロ。 あなたがいなくなってから、もう二回目の桜が咲いたわ。
シエルは愛するゼロの姿を思い浮かべる。 バイルとの戦い。 ラグナロクのエリア・ゼロへの落下を阻止して、そのまま帰ってこなかったゼロ。 泣いて泣いて泣き明かして・・・・あれからもう二年の月日が過ぎていた。
『責任なんか感じる必要ない』
昔。そう言って、ゼロは私を慰めてくれた。 私、すっごく嬉しかった。 私がコピーエックスを作ったせいで世界はこうなったって、罪のないレプリロイドが処分されて死ぬのは私のせいだって・・・・ずっとずっと苦しんでいたの。 そんな苦しみから、あなたは私を解放してくれた。 その時からだった。 あなたへの愛を自覚したのは。 あの時から、ずっとずっと好きだったのよ。 今度の戦いが終わったときに、この気持ちを伝えるんだって・・・。 ずっとあなたと一緒に暮らすんだって・・・・。 そう思ってたのに。
「ゼロ・・・・」 シエルは呟く。 その目から涙が次々と溢れ出し、いつのまにか泣いていた。 「ゼロ・・・・ゼロ・・・・!」 しゃがみこんでシエルは顔を覆いながら、目の前にいないゼロの名前を呼び続ける。 「シエルお姉ちゃん」 「!!」 振り向くといつのまにかアルエットがそばに来ていた。 「シエルお姉ちゃん、泣いてるの?」 「そ、そんなこと・・・」 そう答えるシエルの目からまた涙があふれる。 アルエットはシエルをぎゅっと抱きしめる。 「泣いていいんだよ」 「アルエット・・・・」 「私がそばにいるから・・・・」 アルエットはシエルを見上げる。 「ゼロが帰ってくるまでね、シエルお姉ちゃんが寂しくなって泣いてるとき、そばにいてあげる。だって誰かが近くにいればそのうち元気になれるでしょ?」 「アルエット・・・」 シエルはこらえきれなくなって嗚咽し始める。 アルエットは優しい顔で見守っていた。 「大丈夫だよ。ゼロは絶対帰ってきてくれるわ」 「・・・・」 「だって、ゼロは優しいもん。ゼロのことを大好きなシエルお姉ちゃんをずっと一人っきりにするわけがないもん」 「そうよね・・・。うん、そうだよね」 「うん!」 アルエットはシエルの頭を撫でる。 「だから、笑顔で待っていようよ。シエルお姉ちゃんの笑顔、私も好きだけど、ゼロはもっと大好きだから」 アルエットの言葉にシエルは泣き顔のまま微笑んだ。
ゼロ。 シエルお姉ちゃんはあなたを待ってるの。 だから早く帰ってきてあげてね。 それまで私がシエルお姉ちゃんを守ってあげてるから。 だから、お願い。 早く帰ってきてあげて。 シエルお姉ちゃんをずーっと笑顔にしてあげてね。
アルエットはシエルの笑顔を見て心の中で思った。
|